カスタムジャパンが日本代理店をしている、台湾NCY社のChen社長、技術部長Li氏が新製品シグナスX用アジャスタブルレーシングCDIを持って来社されました。 カスタムジャパンオプティマムセレクション開発チームとミーティングを行い、インタビューを行いました。
同じような商品を扱うことはせず、圧倒的な差別化に注力しています。 台湾NCY社開発期間3年!渾身の逸品アジャスタブルCDI完成
日本のファンの皆さんに貴社NCY社の事を教えて下さい。
1997年設立で台湾の台南市に本社があり、スクーター用のカスタムパーツに強く台湾のスクーターレースでは年間ランキング総合1位を獲得した実績があります。
当社が運営するレースチームからのフィードバックを元に商品開発を行い、台湾はもちろん、日本、アジア地域、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ全土に販売しています。
NCYが運営するチームのライダー数は5人、その他のライダーにも積極的にサポートしています。年末にはNCY杯として主催レースを開催しています。日本への販売は、主にカスタムジャパンを通じて販売しており、ブラックアーバンマフラーの正規代理店として契約しています。
NCYの本拠地のある台南について教えて下さい。
日本と比べると、台北は東京で、台南は大阪でしょうか。台北はマフラー規制やカスタムに対する制限が厳しく、バイクをカスタムしにくい環境です。それに比べると台南の交通規制は緩やかでカスタムもレースも盛んです。用品店やバイク店も多く、バイクをカスタムする土壌が整っています。
カスタムジャパン社も大阪が本社ということで親近感をもって取引しています。(笑)
貴社を日本のメーカーに例えるとどのような会社と似ていますか?
当社を日本のメーカーで例えると武川さんやKITACOさんのようなポジションでしょうか?走行系のカスタムパーツがメインで、外装系のカスタムパーツもありますから。当社の企業姿勢としては、他の台湾パーツメーカーのように特徴のない同じような商品を扱うことはせず、圧倒的な差別化に注力しています。今回、日本市場向けにリリースしたアジャスタブルレーシングCDIもこの差別化の一つです。
台湾カスタムバイク事情について教えて下さい。
バイクメーカーは、大きく分けて5つ、山葉(YAMAHA)、台鈴(SUZUKI)、三陽(SYM)、光陽(KYMCO)、比雅久(PGO)があります。カスタムメーカーは、大小合わせると50社ぐらい存在しています。
比較的にメーカーの規模は小さく、数名から多くても数十名の人数で経営しています。純粋な専業メーカーとしては、十数社まで絞られます。デジタルメーターで有名なKOSO、台北に大きな用品店を経営するDCR、サスペンションメーカーのRPMやMSPなどはすでに日本でも有名だと思います。
台湾の面積は日本の九州ほどで人口は約2300万人、二輪車の保有台数は、約1300万台。人口は日本の約5分の1ほどですが、年間バイク販売台数は、約90万台で日本の2倍、そのほとんどが90cc~125ccのスクーターです。これだけのスクーター大国の台湾だからこそ、台湾カスタムパーツは世界から注目されているのです。
アジャスタブルレーシングCDIについての特徴を教えて下さい。
NCYでは、エンジン内部系、駆動系、排気系パーツの商品で実績があり、人気もあります。
さらなるパワーアップ系のパーツとして電気系パーツ、CDIの開発を行いました。
レーシングCDIとしては各社商品がありますが、通常は進角固定の物が多いです。NCYのアジャスタブルレーシングCDIは進角調整、レブリミットの調整が行える非常にすぐれた機能を持っています。NCY製のカスタムパーツを組み合わせる事によりバイクのエンジンに対するライダーの欲求は1種類ではありません。さらにベースとなるシグナスX自身も個体差が大きく、その為にCDIに可変機能を持たせました。
CDIは電子部品なので、高熱に弱いです。放熱性を向上させる為に、純正と比較して大きめのアルミ製削り出しボディを採用しました。レーシングCDIと聞くと、純正ではリミッター機能を持たせている事も多く、リミッターの解除だと勘違いされておられる方も多いです。
実際には特定の回転数での点火タイミングの調整をしたり、ノーマルCDIでは放電タイミングにずれがある場合があるのですが、レーシングCDIだとずれずに、より高圧の電気を一瞬で放電するので、点火効率が良くなる等の機能があります。
新ジャンルの商品ですが、開発に苦労した部分を教えて下さい。
電子関係のパーツは、開発費用、時間が掛かります。新しく開発用機材を揃えたり、元となるベースが無かったので進角を少しずつ調整しながらテストしました。様々なパターン、組み合わせを設定しテスト回数は数えきれない程行いました。結果としてこのオシロスコープの画像の用に純正と比較して無駄のない波形を実現出来、コイルに瞬間的に大電流を放出出来ます。
セッティングを調整できるとの事ですが、セッティング例、注意点を教えて下さい。
出荷時のセッティングでは、ノーマル車両向きの設定となっています。ただ、個体差によるばらつき、駆動系パーツの状態により、どの車両にも適合するとは言えません。
ですので、微調整が必要な場合もあります。
進角具合の説明ですが、S1、S2スイッチを共に下げた状態では、6000回転までは24度まで進角が進み、そこから9100回転までは24度固定です。その後10500回転までは19度まで遅角します。(下記グラフをご参照下さい)S1スイッチでは、18,21,24,27度の設定が選択出来、S2スイッチでは16,19,22度の設定が選択出来ます。
S3スイッチでは最高回転数の制御が出来ます。8800、9200,9600,10000,10400,10800回転までと400回転ずつ6段階と制限無し、の7種類の設定が出来ます。
例えばSSでは、S1を27度、S2を22度、S3を無制限に設定したり、ボアアップ車両ではS1を18度、S2を16度、S3を8800回転に設定したりすると良いでしょう。ただし、あくまでもエンジン単体での条件でのセッティング例ですので、駆動系パーツの組み合わせにより、最適な設定は変わってきます。また、シグナスXは純正のレブリミットは9350回転です。10000回転以上を回し続けるとエンジン破損につながる可能性が高くなります。そのリスクを理解してカスタムすれば、アジャスタブルレーシングCDIは最高のシグナスXを作る為には欠かせないパーツになります。
回転数と進角の調整がこと細かく設定変更出来るレーシングCDI!前回の商品が完売し、今回は新たに国内シグナスXにも対応しました。メーカーに交渉しプライスダウンも行い、さらにお求め安くなりました。NCYが本気で開発した逸品です。
台湾カスタムバイク事情について教えて下さい。
進角とは、エンジンの点火時期や吸排気バルブの開閉タイミングなど、クランクシャフトの回転角度(BTDC)によって作動する機器の作動タイミングを早める事。点火してから火炎が伝播するまでや、バルブを開いてから空気が流入するまでには僅かに時間がかかり、エンジンが高速回転するほどその影響が大きくなる。その為、高回転では点火時期やバルブタイミングを進角させる事で最適なエンジン性能を発揮することができる。過度の進角は不調を招いたりエンジンブローにもつながる為注意が必要。
BTDCとは、Before Top Dead Center の略。上死点前という意味。エンジンの点火時期やバルブタイミングにおいて、ピストン上死点を0度として、クランクシャフトの回転角度(作用角)で表される。
NCY社とオプティマムセレクション開発チームとのミーティングは十数時間に及び、要望や質問今後の展開などかなり有意義な時間となりました。その後、日本のカスタムパーツ事情をリアルに認識して頂く為に、オプティマムセレクション特設コーナーのある用品店さんにNCY社御一行をご案内して、現状の日本の市場動向、今後の展開について確認して頂きました。今回のミーティングを通じて、さらに魅力的なパーツをスクーター大国台湾から日本へリリースする事をNCY社さんは日本のファンの皆様に確約されて帰途に就かれました。